はなくそモグモグ

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結局、NHK党・立花孝志は何がしたいのか。

ガーシー議員の進退をめぐって、党首を辞任するとの表明をした立花孝志。

ネット上では「何がしたいんだ」「炎上商法で注目を集めたいだけだろ」という声が上がっているが、実際のところ彼は何がしたかったのか?

それについて掘り下げていこうと思う。

 

まず今回のガーシー議員当選について、立花が期待していた機能としては、

議員のスキャンダル暴露によって世論を味方につける。あるいは他党の信頼を落とすことによる、アクティブな浮動票を得るというものだろうが、まずそれは成立しない。

ガーシーという人物は滝沢ガレソのような暴露系インフルエンサーで、視聴者のタレコミによってネタを得るスキームを確立することにより情報を集積していたが(まぁ芸能界に居た時代に得た情報もあるとは思うが)この対象が国会議員となると、提供者は霞が関で仕事をするような官僚達となる。

しかし、官僚になるような人物は芸能スキャンダルに興味が無いのでガーシーにわざわざタレコミはしない。

したがって上記のような狙いは成立せず、世論も「仕事しろ」的なムードが高まり、今回のような結果になってしまった。(あるいは今後辞職の流れになるのではないか)

 

ただ、僕は立花孝志が上記の想定をしていないとは思えないので、議員のスキャンダルを得るのは「できたらラッキー」くらいに考えていたと思う。

とすると彼はなぜガーシーを当選させたのか

それがもたらす《機能》について深掘りしていくと、彼自身が何がしたいのかが見えてくる。

 

NHKは壊せない

彼のキャッチフレーズとして「NHKをぶっこわす!」というものがあるが、そもそもの話、NHKが組織として解散する。という意味においてぶっ壊すことはできない。

NHK問題の根本は「視聴する意思がないのに受信料が徴収される」ことにあるが、その問題が解消されたとしてNHKは、スカパーやWOWOWのようなスクランブル放送サービス、NetflixやHuluのようなサブスクリプションサービスモデルにしても十分収益化しうるレベルのコンテンツ力を持っているので、追い詰められても上記のようなサービスモデルにスケールダウンするだけだ。

そのため、彼自身も「スクランブル放送を実現することによって、NHKを事実上ぶっこわします」といった内容の表現で「ぶっこわす(ぶっこわすとは言ってない)」というニュアンスを暗に示している。

したがって、文字通りNHKをぶっ壊そうとしてもコンテンツホルダーとしての資産を破壊することはできないし、スクランブル化を目指すという方向にしてもZ世代以降の若者がNHKをわざわざ契約する人は少ないのでこの達成も時間の問題である。

したがって彼にしてみれば、「NHKをぶっこわす」という文脈においてはこれ以上何もやることがないのである。

 

彼の目指す先

では彼の活動における裏の目的、真の目的とは何なのだろうか?

もったいぶるほどの内容ではないので、あくまで僕の推測であるという予防線を張りつつ簡潔に結論を述べる。

彼の目的は『選挙コンサルタント』になることではないだろうか?

まず、彼は2019年に参議院議員に当選し、その3ヶ月後に辞職、それにより浜田聡が繰り上げ当選。最近切り抜き動画等が増えたことにより注目と人気を集めている。

僕も彼が議員活動をすることには大きな社会的意義があると思う。

というのも、『自分が単独で立候補したとしても、当選しなかっただろう』と本人が自己評価している通り、約4年前の選挙において立花の快進撃が果たした機能は『本来であれば日の目を浴びないような人を当選させることが出来る』ことにある。

つまり、この選挙において彼は「普段なら当選しない人を議員にする」という能力を示したことになる。彼自身も「僕は選挙のプロ」という風に自己評価をしている。

 

ガーシー当選

上記のように一部熱狂的に支持されるような国会議員を排出したことは機能として良かったが、続く参院選2022で彼がその能力を使う先に問題があった。

浜田議員が光であれば、ガーシーは闇とも言える。そのダイナミックレンジの高低差に一部の支持者は困惑したのではないか

「NHK党迷走してんな」的な声も上がったし、当時副党首だった大橋昌信もこの件を境に離党(除名)している。それについて立花自身も「ずっと俺の近くにおったのに俺のこと何にもわかっとらんな」と述べた。

しかし、選挙コンサルタントという文脈で彼の行動を捉えれば、そこに一貫性あることがわかる。

まず4年前の参院選2019で彼が示したのは「本来なら当選しなかったであろう人物でも当選させることが出来る」という事実だ。だがそのためには自分自身が当選し辞職することで対象を繰り上げ当選させるという手順を踏まなければならない。

したがって同じ状況を再現するために立花本人は国会議員を辞職している必要がある。

これらを踏まえた上で、将来のクライアント目線では以下のことが気になるだろう。

 

①立花孝志というキャラクターありきでしか当選できないのか

②どんな人物までだったら当選させることが出来るのか

 

①について、選挙のプロとして選挙のノウハウがない人物を当選させることができるのはわかったが、NHK党から(立花孝志の繰り上げ当選を経由して)でしか議員になれないのであれば使い勝手が悪い。

例えば他党が議席を増やそうとして選挙活動を委託したのであれば、NHK党→離党→〇〇党入党という籍を移した時点でその関係性が明白になってしまうからだ。

また、立花孝志が手に入れた枠を誰かに譲る。という構造でしか当選できないのであれば、1回の選挙で1人しか当選させることができない。機能としては効率が悪い。

したがって参院選2022では、立花孝志に票が集まるという構造ではない方向性で特定の誰かを当選させるというのを課題設定したと思われる。

 

②について、参院選2019では学歴が高くスキャンダラスな一面がない真面目で柔和な人物を当選させた。

これは想定されるクライアント像にも概ね合致しているが、中にはその真逆の印象を持つような世襲のドラ息子のようなヤンチャで犯罪歴がありそうな自堕落な人間を能力に関わらず当選させたいというニーズがあることも想定される。

その文脈においてガーシー議員は選ばれたのだ。

重要なポイントは以下の三点である

 

・街宣車に乗って演説をするといった選挙活動を一切しない(何なら日本にすら居ない)

・犯罪歴がある(さらに現在で逮捕に値するような罪状を抱えている)

・政治について全くの無知である(思想すら無い)

 

この3点においてガーシーは期待以上の属性を持っていた。これを当選させることができれば《選挙コンサルタント》としては大きな実績となる。

 

次の目標

ひるがえって、今日のニュースである。

NHK党・立花孝志氏が党首辞任 ガーシー騒動の責任取り 党名も「政治家女子48党」に変更(よろず~ニュース) - Yahoo!ニュース

立花孝志が党首を辞め、党名を「政治家女子48党」へと改名した。

ここまでの話を踏まえれば、その意図は容易にわかるのではないか?

ガーシー当選において、真面目くんから不良(犯罪者)まで当選させる選挙の能力があることを示したが、まだ彼の実績には課題が残る。

 

①ガーシーを立てて当選させたとは言え、まだ立花孝志のネームバリューで集票した感は否めない。

②女性という属性をまだ当選させていない。

 

この課題をクリアするため、党名を政治家女子48党に変え党首を大津綾香にするという采配をしたのだ。

新党首は元子役のタレント上がりとはいえ、ガーシーより知名度も注目度も劣る。そんな彼女を立花孝志という顔を立てずに政治家女子48党として議席を獲得することができたならば、選挙コンサルタントとして立花孝志の名前が表に出ることなく選挙を有利に進めることが出来る。

つまり立花孝志の影が見えない独立した政党が運営されたのであれば、彼の手腕は標準化された選挙ノウハウとして完成されるのだ。

 

また、彼の能力として、ある人物の知名度に応じてこの規模の選挙は受かるという目算ができる点。YouTuberのヒカルを「国会議員になれる」と評すなど、どの選挙区にどの人物を立てれば勝てるかの肌感覚を持っているのは強い。

というのも自民党が元おニャン子クラブの生稲晃子をコピペ公約で当選させた事実から見ても「議席数を増やすために知名度があり、政治思想を持たない席を確保したい」というニーズが与野党ともにあるからだ。

 

最後にもう一つ、その選挙ノウハウ自体も金がかからないのも大きい。

多くの議員は朝早く対面で握手したりビラを配ることで選挙活動をする。街宣車や印刷代など古典的な選挙活動によるコストは馬鹿にならないので、これにより不正な金を受け取ったり、国会で居眠りしたりという非生産的営為に物資が大量に消費されてしまう。

対して立花は『日本で一番金のかからない選挙活動』と評している通り、選挙期間中はYouTubeで動画を投稿するだけで、街宣車による活動も1,2回程度しか行っていない。

さらにガーシー自体は選挙活動に殆ど参加していないことから、彼の選挙コンサルにおいてクライアントがかけるコストは非常に少ないことが予想される。(マージンをいくら取るかは別の話としてあるが)

 

そのため、選挙に受かりたい個人はもとより、不特定多数を選挙に通したい組織集団にとってもこれは需要のある話である。

 

最後に

中長期的な課題として、彼はまだ自身のノウハウによって衆議院選挙を突破したことがない。

したがって、今後そこを取りに行く動きを見せるのは想像に難くない。

 

個人的には、ガーシーの当選は疑問符だが、浜田聡が国会議員になれたことと、政治家女子48党が今後国政政党になるのであれば、それは社会的な意義があると思う。(僕は男女の割合を一定にしようとするクォーター制にはミクロでは賛成なので)

 

今後、NHK問題とは別のパッケージ化された政党のスタートアップ支援として彼の手を離れて事業は大きくなっていくことと思う。

その選挙ノウハウが、既得権益の勢力維持に使われるのではなく、社会的意義のある活動の支援として使われることを切に願う。