はなくそモグモグ

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進撃の巨人に対するよくある誤解

終盤ではシナリオに力を入れていたからか全く感じないが、最序盤では単行本の扉絵などに立体機動装置や壁の構造の説明とかが書いてあって、そこが妙に科学考証を意識した内容になってたんですよね。

作者本人の意向なのかはわかりませんが、初期の単行本には科学考証専門の監修がついていたりします。

僕がすごく印象に残っているのは、ネットの感想とかでよく誤解される巨人の重さ問題。

僕が見た誤解では「巨人化してもあのサイズで体重変わらないとか風で吹き飛ぶだろw」みたいなの

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進撃の巨人 5巻 第20話『特別作戦班』

この1ページが全ての元凶と言いますか

「切断した腕はその質量にあるべき重量には到底達していなかった」

 この書き方が悪いと思いますね。「その体積にあるべき重量」が正しい表現かな。(いやでも密度は変わらないということを意味するなら質量でいいのか)

なんでここの説明するシーンがあるかというと(というか僕はそもそもナラティブ的な目線でいくとこのシーン無くてもいいんじゃない?とも思います。)

 

中学数学と高校生物の話になるんですが、高さをn倍した立方体の表面積はn2倍、体積はn3倍ってあるじゃないですか。

生物における表面積は表皮、体重は体積に比例するので体積は体重と見ることが出来ます。

つまりエレンが巨人化したとき、"進撃の巨人"のサイズは15m級なので大体高さは10倍になってるわけですよ(計算が面倒くさいのでエレンの身長は1.5mとする)

そのまま人間と同じ体重比で考えると

高さが10倍だと巨人化した時の体の表面は2乗して元の100倍体重は元の1000倍になっちゃうわけですよ。

で、生物の筋肉の力の強さは筋肉の断面積に比例するんですが、その増加比は表面積と同じでn2倍して元の100倍。

生物をそのまま巨人化した質量比で考えると、筋力は元の100倍なのに体重は1000倍、つまり足には巨人化前の10倍の体重の負荷がかかるわけです。

このような話を2乗3乗の法則とか言うらしいですが。

体重60kgベースの普通の人体に、540kgの負荷がいきなり足にかかるようなものです。(これが現実の生態系において無制限に大きい生物が生まれない理由でもあります。)

とはいえ人間が巨人化するファンタジー作品なのだから、"道"を通じて謎のエネルギーが送られてくるとかでもいいのに、そこを突っ込まれるのを恐れたのか、元の人間の質量比とは異なりますよってことを弁明したシーンが上記のそれだと思うんですよ。

なので、巨人は軽いわけではないです。

人間のサイズに対する身長:体重の比より巨人のサイズに対する体重は軽くなっているよって話で、重さは十分にあると思います。

 

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超大型巨人なんかは、その質量比を説明するために「元々人間のそれより巨人の質量比は軽めになっている」という設定に加えて、手が細かったり逆に支えるための足はめちゃくちゃ太くなってたり細かいところで機能性からくるデザインになっていたりします。

 

ちなみに余談ですけど、生物のサイズnに対して表面積はn2倍、体重はn3倍という話で、恒温動物の体温は体重に比例するんですよ(脂肪を燃焼しているから)

そして汗とかを通じて体温が出ていくのは体の表面からじゃないですか。

したがって熱生成は生物の全長のn3倍で増加していくのに対して、熱放出は全長のn2倍なんですよ。

なので、体が大きくなればなるほど体温は上がっていくと(熱生成の増加率n3倍に対して熱放出の増加率n2倍が追い付いてないから) 

なので、寒い地域の動物ほど凍死しないように体が大きくなるんですよね(ベルクマンの法則)逆に暑い地域の動物は熱放出を多くするためにしっぽとか耳を長くして体の表面積を稼いだりしてます(アレンの法則)

 

なので超大型巨人が熱を放出するのはあながち科学的には間違いでもないっていう(元々巨人自体が蒸気を発するくらい熱いっていう設定があるけど、多分ここの科学的な由来から来ていると思われる)

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 なので「人間の質量比よりも軽く作られているなら人間のサイズ比で持てない岩は巨人化しても持てないだろ!」っていうツッコミも、熱放出が間に合ってない余った熱をエネルギーに変換しているんじゃないですかね(笑)

意外とこういう物理を意識した科学考証も詰めているというのも見どころポイントだったりします。