はなくそモグモグ

webサイト:http://kusonote.fool.jp

ある日、僕の熱は合理的に冷却されてしまった。むさ苦しい熱さが、幸福そのものだったということに気づいたのは、もう少し後だった

脳内にUSBフラッシュメモリを埋め込みたいとか言ってる奴、本気で言ってんのか????

本当にそう思っているのか?????

 

記憶領域が広がってより高度な演算が自発的に行えちゃうんだぞ?????

本当にいいのか????

 

それによって、人間の機械的能力の差が地平線の如く平衡になる

本当にいいのか??????????????

 

テストの点数がみんなおなじになる。

本当にいいのか??????????????

 

合理的な計算で学校に最短距離でついちゃうんだぞ??????

遅刻すれすれのスリルを経験できなくなるんだぞ?????

本当にいいのか??????

 

隠されていた真実を、現実を向き合うことを。

本能が望むんだぞ?

本当にいいのか??????????????

 

体育においての最も合理的なプレイをすでに結論付けられていて、

あとはそれをどれだけ忠実に再現できるかという内容が

全スポーツに適応されていて体育競技すべてが同じ内容になる??????

本当にいいのか??????????????

 

ちょっとした失敗や恥辱を、永遠に保存されてしまうんだぞ????

ふとした時に、失敗を見つけて後悔しつつも訂正できない歯がゆさを感じるんだぞ??????

そいつらと日々向き合っていくんだぞ?!!!本当にいいのか????

 

気になるあの人が自分の方を向いてないって秒単位で無情に結論付けるんだぞ????

本当にいいのか????

 

AV女優の喘ぎ声が露骨な演技であると経験と高知能が大音量で訴えかけてくるんだぞ??????

本当にいいのか??????

 

せっくすって・・・

本当にいいのか??????????????

 

死にたいって思った時に一番周りに迷惑を描けないかつ楽に死ねる最効率な方法を瞬時に発想するんだぞ?????????

本当にいいのか???????

 

そっけない相手の行動が実は欲望にまみれていて、それを隠すための狡猾な手段であることを、

リアルタイムで見抜けちゃうんだぞ????????

本当にいいのか??????????

 

渾身のネタを笑ってくれたあの子の笑顔が作り笑いであるということを

ネタを披露している途中で気づいているのに終わらせるわけにはいかない。。。

本当にいいのか??????????????

 

しかし、それが単なる社交辞令ではなく、

彼女自身の人生の苦しみで疲れていて、「笑いたかった」ゆえの行動であると。

それでも本気で笑かせられなかった自分の実力不足を悔いる・・・

本当にいいのか??????????????

 

そうして僕は真実を知った・・・

どうしていままで気づいていられなかった???????

僕は見てた、ずっと見てたんだ。見ていたつもりだった。

彼女への愛は誰にも負けないと自負し、彼女のことはいろいろ調べた。

知っていたつもりだった。

僕の一切を癒してくれた笑顔の裏を、

何にも見えちゃいなかったんだ

本当にいいのか??????????????

 

「どうして気づいてやれなかった。僕は何をしていたんだ」

きちんと話したこともない人間のことをひたすら考え布団をかぶる

自責に苛まれ、鮮明に記憶される彼女の数々の笑顔に

救われていた過去を恋しく思うと同時に、その時、その瞬間でさえも!

彼女は苦しんでいたんだ・・・

ひたすら脳みそをヒートさせながら朝を迎えられない夜を迎える

効率よい眠り方を演算するのが合理的であることは知っているのに

本当にいいのか??????????????

 

足取りが重い、

超人的な演算ができるのに、

家からの最短距離と能率を手に入れられるのに

いつも絶対に遅刻しないルートなのに

遅刻しそうになる。

そんな、平日のある日。

本当にいいのか??????????????

 

僕は教室へ入った。

あの子の姿は、僕への幸福配達の終焉を告げるかのように見えなかった。

授業を受ける、いつもどおり視線を黒板から遠ざける。

僕が必死に演算した、バレずにあの子を見る方法。

頑張って演算したのに

あの子は見えない

本当にいいのか??????????????

 

僕は体調不良を訴えた。

早退することになるが

本当にいいのか??????????????

 

僕は走った、ひたすらに

本当にいいのか??????????????

 

彼女の家につく、

教えてもらっていなかった住所、

数字と情報は紙一重で、数字を司ることはすなわち情報の公営化を意味する。

そんなことを考える余裕もなく、ドアを開ける

開いた。。。

本当にいいのか??????????????

 

僕は見た、

彼女が倒れているのを。

僕は別れようとする彼女を必死に止めた。

「僕が君の支えになるから!!!!!!!」

「僕が!!!!!!!!!!!君を守るから!!」

「どうか!!!!!僕の幸せを!!!」

「奪わないでくれ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

何を言ったのかわからない

有能な記憶装置を持ってしても、記憶処理デバイスが能なしでは記憶できない

ただ、覚えているのは

抱きしめた彼女の手が

僕を離さまいとしていたことぐらいだ。。。。

本当にいいのか??????????????

 

それからというものの、僕は天国だった。

彼女の笑顔もどうやら本物らしい。

僕は「気付かれずに君を見る方法」を演算処理せずとも

視界に入れられる。

彼女の右手が僕の左手を持ち上げる。

まるで僕の心と君の心を繋ぐ架け橋のようだ。

こんな関係

本当にいいのか??????????????

 

この思い出は、機械に頼らずとも一生忘れないだろう。

その後に訪れる、最悪の出来事も。。。

本当にいいのか??????????????

 

ベンチに座り込む僕、

思い出の彼女を眺めながら、実物の彼女を眺められるのを待つ。

どうにも遅い。。。

忘れているのだろうか?それとも・・・

彼女の人生背景だけに嫌な予感が頭をよぎる。

家に行ってみよう。

本当にいいのか??????????????

 

告白、以来かな、この家に来るのは。

彼女自身、家を見せたくないらしく、僕が「家まで送る」と言っても遠慮する。

僕自身、彼女に気を使うのもあるが。

あの恥ずかしい告白が毎日頭のなかをぐるぐる回る。

感情的なのと機械的なのは混ぜてはいけないらしい

ドアノブを握りしめる。

あの日とおなじ感覚、

ドアが・・・

開いた

本当にいいのか??????????????

 

救急車が来た。

最愛の人を乗せて何処かへ向かって行く

もう会えなくなるような別れを、再現するように。

彼女の体は、僕の心よりも先に。

冷たくなっていた。

本当にいいのか??????????????

 

僕は抜け殻になった。

記憶は張りさそうなほどパンパンなのに、

毎日毎日膨大な量を、どうでもいいことを蓄積していく

記憶自体はただの電気で、この全宇宙を構成する多大なる分子の中の最小単位

であるちっぽけな存在だと

そのちっぽけな粒の反応に僕達は踊らされているにすぎないのだと

自然が、機械が。

物語った・・・

本当にいいのか??????????????

 

そして失った最愛の人の死を忘れられず、毎日精密に記憶された思い出に話しかけるも

所詮は記憶であって過去の自分との応答以外には反応するわけもなく

応答しなくて途方に暮れ、夕焼けを眺めながら彼女の好きだったコーヒーをすする日々を繰り返すんだぞ??????????

本当にいいのか??????????????

 

あの時、自分がこうしていれば・・・という彼女を助けきれなかったあの日の最善策を

ひたすら計算しても、失った彼女は戻ってこないということに

機械だよりでなく自分自身で気づいているのに

そんなことはとっくにわかって・・・ッ!!!

本当にいいのか??????????????

 

こんな世界なんて・・・!!!

そして、俺は最大の禁忌に手を染める・・・

本当にいいのか??????????????

 

僕は、彼女を忘れようと・・・

本当にいいのか??????????????

なぁ????????????

本当にいいのか??????????????

 

彼女とはなんだろうか、僕にはできたことがない。

きっと楽しいことなんだろうな、大人が、子供が。

それを共通して嗜んでいる。

全く本能とは恐ろしい。

ところで僕は至って普通の平凡な学生だ。

こんな人生で

本当にいいのか??????????????

 

彼女を忘れ、悲しみを背負っていくことから逃げた人生の中で、

彼は1つの写真を見つける。

「僕と・・・誰だ・・・?」

見たこともない人物だが、愛くるしく美しかった。

機械の記憶消去能力は優秀で、一度削除したものは蘇らない。

「どこかで見たことあるような・・・」

かつての最愛の人であることは、もう知らない。

「ないような・・・」

どこか脳がかゆい感覚に苛まれた、もやもやが晴れない。

数カ月前にここに引っ越してきた訳だが。覚えていない女性の写真を持ってきたのか?

「まぁ、また今度あっちに言ったら聞いてみるか」

思い出すことのできない機械の運命に身を委ねる。

 

そう、彼は高い演算能力と記憶力と引き換えに

人間らしさを失ってしまった。

絶対に忘れない記憶装置を脳内に埋め込むことで

 

「忘れる」ことを忘れ、

 

「思い出す」ことを思い出せなくなっていた